【HYPOST #002】とくいな事

あなたには得意なことはありますか。

きっとそれは、社会の中で高い評価を得られることに違いありません。


それによって、あなたが社会的な利益を得られるものに違いありません。


得意な科目とか得意な仕事とか...


でも、得意なことって得てして退屈な作業になってしまうんですよね。


人間は無味乾燥な繰り返しを嫌うと思います。


いつしかそれが、自分を縛る不自由の最たるものになるのだから。


朝起きてご飯を食べて仕事に行って帰ってきてまたご飯を食べて寝る。


そんな日常の繰り返しとか。


自由への希求は、今ある利益を手放してしまうほど強い衝動をもって現れます。


この人はある日、自分の得意な事に疑いを持ち始めました。


私はこんなにも苦痛を感じている。


社会は、得意な事を良いことであるというが、それは果たして正しいのだろうか。


私が毎回導き出すこの答えは、本当に正しいのだろうか。


こうして得意な事を持つ人たちは、その先にある未知の世界へ、自らの身体そのものを投げ込むのです。



...底は暗く深い闇に包まれている。


ここは私の存在を許さない息苦しさを感じる。


あれほど得意だった事も、もう出来なくなってしまった。


正しいと言って褒めてくれた人たちも、いまや間違っていると言って非難してくる。


自明であった真実は、いつしか闇の中にその姿を潜めてしまったのだ。


だけど、その人は歩みを止めない。


辺りは真っ暗だから、前進しているのか後退しているのかわからない。


だけど、その人は歩みを止めない。


辺りは真っ暗だから、足をついて立っているのか、宙から吊るされているのかもわからない。


だけど、その人は歩みを止めない。


...いつしか光は内からこぼれ、辺りをうっすら照らし始めるでしょう。


どうやら私はちゃんと地に足をつけて前に進んでいたようです。


私たちの素晴らしい人生の先に決定づけられている死は、確かな道標でした。


私たちを地上に縛り付けていると思っていたこの重力は、確かな命綱でした。


内から溢れる光が、長いトンネルの出口から差し込む光と交わったところで、多くの人が特異である事を称え、私を迎え入れてくれました。

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